きぼう 3





シャングリラからナスカへ、ジョミーが懐妊したという通信が入り、ナスカに居たもの達はとても驚き、そして喜んだ。
お祝いムードになった艦内に、ジョミーは気恥ずかしくなってブルーの寝室へと避難していた。
廊下を歩いていて誰かに出くわせば、必ずお祝いの言葉を言われて。
とても嬉しそうに話しかけてくれるのは嬉しいのだが、何ともいえない恥ずかしさの方が勝ってしまった。
そのせいで、ジョミーは人目につかないブルーの寝室に居座らざるを得なくなっているのだ。

「ごめんね、ブルー…」
「何を謝るんだい?僕はジョミーを独占できて、とても嬉しいよ。」

自分でジョミーをソルジャーにしておいて言うのも何だが、普段のジョミーはソルジャー・シンなのだ。
ブルーのジョミーではない。
皆が慕うソルジャーだ。

「いつも忙しそうにしていたから、久々にゆっくり出来るだろう?」
「でも…皆は変わらず忙しいのに、僕だけ暇なのってなんか…」

意外に生真面目な性格のジョミーの頭を撫でて、ブルーは相変わらず軽いジョミーの身体を抱き上げた。
そしてベッドに寝かせると、自分も隣に寝転がる。
広いベッドは二人が寝転がっても余裕があるが、ぴったりとくっつく様にして寝転がった。
未だに抱きしめられることに慣れないのか、ジョミーの少し早い鼓動が聞こえて、ブルーはくすくすと笑う。

「なに笑ってんの」

ジョミーがぶっきらぼうに言うが、ブルーはなんでもないよ、と言うだけだ。
こんな時のブルーは絶対に何も教えてくれないことをジョミーは知っている。
問い詰めることを諦めたジョミーはブルーの背中に腕を回して、身体を預けた。
すると、ブルーの腕がジョミーの背から次第に下へと降りてゆく。
少しドキリとしたジョミーだったが、ブルーの手が下腹部に触れたことで、微笑んだ。

「ここに…僕達の子供が、いるんだな…」
「…うん…まだ全然わかんないけど…」

まだ平坦なそこは、ジョミーの胎内に新たな命があることを全く悟らせないほどだ。
だが、ブルーは温かく大きな掌で優しくいとおしむように撫でる。
そっと腹部を撫でるブルーの表情はとても穏やかだ。
先程の怒った顔も凛々しくてよかったが、やはりブルーは微笑んでいるほうがいい。

「そうかい?」
「!?……っ…また読んだの!?」
「読んでないよ、聞こえたんだ」

ジョミーの咎めに、ブルーは飄々と答える。
むっとしてジョミーが声を荒げた。

「うそ!!」
「うそじゃないよ、聞こえたんだ。ああほら、そんなに声を荒げたら赤ちゃんがビックリするだろう?」

何度も下腹を撫でながら言うブルーに、ジョミーは呆れて笑ってしまった。
そして意地悪く笑うと、ブルーは意外と親バカなんだ、と今度は本人に聞こえるように心の中で考えた。

「だって、ジョミーと僕の子だよ?可愛くないはずがない」

開き直るブルーには勝てなかった。
ジョミーはブルーの手に自分の手をそっと重ねた。
生まれてくる子供は、どんな子になるだろうか。
なんという名前をつけてもらえるのだろうか。
期待に溢れるジョミーの心が分かり、ブルーもジョミーの指を絡め取った。

「明日、図書館で色々調べよう。」
「図書館で?」

小首を傾げるジョミーに頷く。

「あそこなら、自然受胎や自然出産の資料や文献があるだろうから…明日、一緒に調べよう。」
「ブルーも調べてくれるの?」
「当たり前だろう?ジョミーだけが妊娠した訳じゃないんだから」
「ブルー、その言い方はおかしいよ、妊娠したのは僕だけだよ。そんな言い方したら、ブルーまで妊娠したことになっちゃう」

くすくすと笑いながら言ったジョミーに、ブルーはそうかい?と返してジョミーを抱き込んだ。
とても、幸せだ。
ジョミーがシャングリラに乗艦してから、こんなに穏やかな時間を過ごせたのはブルーもジョミーも初めてなのだ。
体調が悪かったり、敵に追われたり、ナスカへ降りたり色々あった。
だが、これからは二人で穏やかな時間を過ごせるのだ。
初めての妊娠だから、大変なことも沢山あるだろう。
きっと二人なら乗り越えてゆける。
そう、確信を持っていた。

「う…」

こしこしと目を擦り始めたジョミーに気付いたブルーは、ジョミーに毛布をかけると額と目蓋にキスをして、背中を撫でた。
すると1分も経たないうちにジョミーは眠りの淵に落ちていった。

「ゆっくりおやすみ、ジョミー…」

















     
今回は少し短くなってしまいました…!
次回もきっとラブラブ?なブルジョミで参ります^^



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