unlucky? 13






「だめだ…寝れない…」

ごろりごろりと寝返りを打ちながら、ジョミーは溜息を吐いた。
本当は寝返りを打つことさえ億劫で。
腰はだるいし、腕は筋肉痛のようにぎしぎしと痛んでいる。

いつの間にか日が昇ったのか、ブラインドの隙間からは幾筋もの光が射し込んでいる。
結局、朝が来るまで眠れなかった。
気を失っている時間が長かったのか、不思議と眠くならなかったのだ。

隣で眠るブルーに目をやると、彼は安らかな寝顔を浮かべて眠っている。
起きているときよりも少し幼い感じのする彼の寝顔。
長い睫毛に、意外にふわふわとしている銀髪、今は隠されている紅玉。
端整な顔に散りばめられたパーツですら、かっこよく見えるのに。

「何で僕を?」

ぽつりと呟き、もう一度溜息を吐いた。
考えれば考えるほど、訳が分からなくなる。
自分を抱いた意味も、情事の最中に囁かれた睦言も。
全て、虚構にしか思えなくなっている自分がいた。

「ん…」

ごそ、と隣のブルーが身動ぎをして、ゆっくりと目蓋が開かれる。
ぱちりぱちりと数度瞬きをして、ジョミーを捉えたルビー。
ぼんやりと視線に晒され、ジョミーはどきりと心臓を跳ねさせた。
そして形の良い唇から、言葉が発せられる。

「おはよう、ジョミー…」
「あ、おはよう…ございます…」
「もう…朝かい?」

眉を顰めてむくりと起き上がったブルー。
ジョミーはどんな反応をすれば良いのか分からずにブルーをじっと見つめている。
するとブルーは小首を傾げてジョミーを見た。

「?どうしたんだい?」
「あ……」

不思議そうにしているブルーに言いよどむが、勇気を出して、聞いてみようと思ったジョミー。
ギュッと布団を握り締めて、言葉に出した。

「あのッ…きのう、の…こと…」
「…昨日?」
「あ、映画を見て…、その、後…」

ジョミーの言葉に、ブルーはじっと考え込んでいる。
何故、彼が考え込むのだろう。
二人して眉根を寄せていると、ブルーが漸く口を開いた。

「映画を見て、その後の記憶が…ないんだけど…何か、あった?」
「……え………?」
「映画の途中から、ぷっつり記憶が途切れてて…」
「…………」

ぽかんとブルーを見つめるジョミー。
これには、さすがのジョミーも呆けるしかなかった。

まさか、記憶がないだなんて。
あれだけ激しく自分を抱いておきながら、記憶がない?
何度も愛を紡いだのも、ひと時の虚構?
酔った勢いであれだけのことを、ブルーはしてしまうのだろうか?

ぐるぐると考えて、ジョミーは目頭が熱くなるのを感じた。
思わずブルーにごろんと背を向けて、シーツに顔を押し付ける。

「ジョミー?具合が悪いのかい?」
「ッ…なんでも、ないです…」
「声も少し枯れてる…風邪かな…」

そっと大きな掌が額に触れて、びくっと肩を揺らしたジョミー。

昨日は、この掌が触れていたのに。
何度も何度も、撫でてくれたのに。

唇を噛んで涙を堪えていると、ブルーがベッドから降りる気配がした。

「朝ごはん、作ってくるから…少し眠ってなさい。」

そう言ってブルーは寝室から出て行ってしまう。

ここにいるのはもう、昨日のブルーじゃ、ないんだ。

そう改めて認識したジョミーは、布団を頭まで引き上げると、身を縮めてぽろぽろと涙を零した。












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ブルーひどっ^p^
あんなことしといて忘れるなんて…!
ジョミーごめんよぉぉ…!





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