The day when I shot down a lover





ここ最近、ブルーの様子がおかしい。
ふらりと一人でどこかへ消えてしまったり、何かに耐えるような、そんな表情をするのだ。
ジョミーはブルーに何かあったのかと聞くが、ブルーは決まって"なんでもない"と言うのだ。
なんでもない訳がない。
何でも一人で抱え込んでしまうブルーが、心配だった。






ブルーとジョミーが初めて出会ったのは、数年前のこと。
村近くの森の中で、ジョミーはよりによって魔物に襲われたのだった。
逃げて逃げて、追い詰められて。
もう駄目だと諦めかけたその時、ジョミーを護るように立ちはだかった青年。
それが、ブルーだった。
ブルーは街からやってきた旅人で、偶然この森を通りかかったとき、魔物に襲われるジョミーを見つけたのだ。
魔物の爪が身体に当たり、怪我をしたブルーを自宅で介抱している間にいつの間にか、二人は恋に落ちていたのだ。

ブルーはジョミーの為に街へ帰らずに、村に留まってくれた。
それから数年が経った今、状況は大きく変わろうとしていた―――。







「ん……」

夜中にぱちりと目を覚ますと、寝る前までは隣にあった温もりがない。
突然の不安に駆られ、ジョミーはがばりと飛び起きると家の中を見回した。
どこを見ても、ブルーがいない。
どうしようもない焦燥感に、ジョミーは思わず外へ出た。

満月の夜。
不自然なほど明るい夜空に驚きながら当たりを見回す。
ふと地面を見ると、足跡が幾つか残っていた。

「ブルー…どこにいるの…?」

暫く歩いていくと、よく知った後姿が見えて。
ジョミーは安心して彼の背に近寄った。

「ブルー…ッ!?」

彼の名を呼ぶとブルーはびくりと身体を強張らせて振り向いた。
その表情は固く、いつもの笑顔ではなかった。
そして彼の右腕に目をやると、それは、人の腕ではなかった。

どこかで、みたことがある―――。

記憶を辿り、はっと気付いた。
あのときの魔物の腕に、ソックリだった。
驚きのあまりにジョミーが何も言えないでいると、ブルーが苦笑を漏らした。

「ジョミー、こんな夜中に出歩いたら危ないだろう?」
「…………そ、の…うで…」

ジョミーの顔は、暗闇でも分かるくらい真っ青だ。
魔物の腕ではない左腕を伸ばして、ジョミーの頬を撫でる。

「僕が怖いかい?」
「怖くは…ない、けどッ…なんで…その腕…?」

泣きそうな顔をするジョミーの頭を撫でて、ブルーはジョミーに再び背を向けた。

「この国には、言い伝えがあるんだ。」
「そう、魔物に傷を負わされた者はいずれ、同じ存在に成り果てる、と。古くから伝わる言い伝えだ。」

くらりと、眩暈がした。
それでは、ブルーは自分を庇ったせいで魔物になってしまうというのか。

「そん、な…!」

嘘だと思いたかった。
ブルーが、魔物になってしまうだなんて。
これから幸せに暮らせると、結婚して子供を作って、皆で暮らせると思っていたのに。
未来を想う以前に、彼の将来を奪ってしまっていただなんて。

「ブルー、ごめんなさい、ごめんなさい…!」

ぶわりと溢れた涙が、ぽたぽたと地面に落ちる。
自分を助けたばっかりに。
ジョミーの心はそれでいっぱいだった。

「ずっと…知ってた、の…?」
「………ああ。僕が唯一魔物を倒すことが出来る、銀の弾丸の入った銃を持っていただろう?今まで、君には言っていなかったけれど…僕は、街では名の知れたハンターだった。あの銃は、ハンターが持つものなんだ。」

ブルーはジョミーに出会い、魔物に襲われたあの瞬間から、自分がどうなってしまうか知っていた。
未来を全て諦め、いつ魔物に変わってしまうか分からない恐怖と独りで戦っていたのだ。

「僕、の…せい、で…!」
「違う、君のせいあじゃない。僕は魔物を倒すためにあそこにいた。」
「でもっ…僕がいなければ、ブルーは…!」
「ハンターになった時点でいずれこうなるとは思っていたんだ。覚悟は出来ている。」

泣き止まないジョミーの濡れた頬を拭おうとして、ブルーは手を止めた。
魔物の腕で、ジョミーを傷つけてしまうわけにはいかない。
伸ばした腕とは反対の手で、ジョミーの涙を拭った。

「泣かないで、ジョミー…。」
「泣く、よ…ッ!ブルー、やだよ、置いていかないで…!」
「…駄目だ。変化が始まったら、もう無理なんだ。」

信じられなくて、信じたくなくて。
ジョミーはブルーに抱きついた。
ブルーも何も言わずにジョミーを抱きしめ、しばらくそのまま互いの温もりを感じていた。













     
ブルジョミシリアスです…!死ネタなので、苦手な方はご注意!
このお話はとあるアーティストさんの曲の内容をパロってあるのですが、お分かりの方いらっしゃいますでしょうか??
小説の題とかで分かる かも…!
分かった方はご報告ください^^リクエスト権をプレゼント!
多くの方がご報告下さいましたら、あみだで決めます(笑)
宜しければご参加下さい^^
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