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「うぅ…おなかいたい…」

今日一日、訓練の休みを貰ったジョミーは身体をくの字に曲げてベッドに横たわっていた。
下腹部から引き裂かれるような痛みが断続的に起こっている。
毎月一回、こんな痛みに襲われているのだから、堪ったものではない。
下腹を押さえつけるようにして痛みから気を逸らそうとするが、あまり効果はない。

「いたい…」

あまりの痛みに、涙が出てきた。
女って不便だ。
ジョミーは唇を噛み締めて目を閉じた。

ジョミーに初めて月経が訪れたのはこの艦に訪れてからだ。
14歳という年齢で身体にも性徴はあったから、すでに兆しはあったのだろう。
そして急激に環境が変化したために、月経が来てしまったのだ。

『ジョミー?今日は来ないのかい?』

思念波でブルーに話しかけられ、ジョミーはふと顔を上げた。
そういえば、今日はブルーの部屋へ行っていない。
毎日ブルーの部屋へ寄ってから訓練へ行くのが日課だったのだ。
それが、今日は痛みでそれどころではなかった為に顔を出せなかった。

『ブルー…』
『ジョミー、どうかしたのかい?そっちへ行っても?』
『っ駄目!』

即答で拒否を受けて、ブルーは少しむっとしたようで。
少しの沈黙の後、そこで待ってなさい、と聞こえた。
ジョミーは慌てた。
今日は一日外に出るつもりはなかったから、ジョミーはとてもラフな格好をしている。
下はタオルケットを被っているのだが、上は下着もなしにキャミソール1枚なのだ。
さすがにそんな姿を見られるのは恥ずかしかった。

そして、どうしても来て欲しくない訳があった。
この部屋の周りには思念シールドが張ってあるのだが、部屋の中は全く無防備な状態だ。
そんな中に来てしまうと、ジョミーの痛みが移ってしまう。
さすがに他人にこの痛みを移すのは気が引ける。

『ま、待って、ブルー!』
「もう遅いよ。」

直に耳に届いた低い声。
振り向くと、ブルーの姿があった。
ジョミーは慌ててタオルケットを胸まで引き上げる。
そして唇を尖らせてブルーを見た。

「ブルー…駄目だって言ったのに」
「仕方がないだろう?君が、来てくれないから」

こつこつとブーツの音がして、ブルーが近づいてくる。
そして椅子をベッドサイドに引っ張り、座った。
ブルーはジョミーに手を伸ばすが、ジョミーは思い切り構えてしまった。

「触れさせない気かい?」
「だって…うつる、から」
「大丈夫だ…手を。」

手を差し出される。
だが、触れてしまえば痛みは確実にブルーへと移ってしまうだろう。
躊躇していると、焦れたブルーはジョミーの手を強引に取った。

「……ッ……」

眉を顰めたブルー。
きっと、痛みが移ったのだろう。
申し訳なさそうにジョミーはブルーを見上げた。

「痛い…でしょ?」
「ああ…ジョミー、大丈夫かい?」
「ん…ブルーが来てくれて、ちょっと楽になった」

無理をして笑うジョミーの頭を撫でると、ジョミーは擦り寄るようにしてブルーの手を掴んだ。
小さな手はとても冷たい。
温めるように両手で擦ってやる。

「ジョミーは…こんな痛みに耐えていたのか…」
「ん……?」
「じくじくと痛むんだな…思わずしゃがんでしまいそうな…」

もう片方の手をすっと伸ばし、ジョミーの下腹部に触れる。
ジョミーは少し頬を染めたが、嫌がることはなかった。

ブルーの大きな掌から、じんわりと温かさが伝わってくる。
温めれば少し楽になることは知っていたのだが、何せそこまで気が回らない。
いつも痛みで思考力が保てないのだ。
だから、こうしてブルーが触れていてくれるだけで、すごく気が楽になった。

「あり、がと…」

ありったけの感謝を込めて、ジョミーは身体を起こすと、ブルーの頬に口付けた。

「ジョミー…!」
「わー!」

感極まったブルーは思わずジョミーを抱き上げてしまう。
そして抱き上げたままベッドに座り、ジョミーを膝の上に乗せた。

「何だよ、この体勢!」
「いいから。」

嬉しそうにしているブルーを見て、ジョミーは反論出来なくなってしまった。
抵抗することを諦めて、素直にブルーに身体を預けた。



そして暫くして、ジョミーは落ち着いたのか、ブルーの手を握ったまま眠りについた。
すぅすぅと聞こえる寝息。
寝息と同時に上下する胸を見ると、何と、タオルケットの下はキャミソール1枚だったジョミー。
発達途中の乳房が見えてしまっている。
思わず、ブルーはばさりとタオルケットをかけた。

「子供か、僕は…」

好きな女の子の裸を見て、興奮するなんて。
この年になって、と自嘲的に笑った。

自分に比べるとまだまだ若いジョミー。
だが、彼女は無意識に自分を煽ってくれるから、困る。
ふとした仕草や、この様な格好も全てが魅力的だ。
ふぅ、と息を吐きだしてブルーは力を抜いた。



今日は一日、ジョミーとここでゆっくりと過ごそう。
痛みが和らぐように、ずっと撫でていてやろう。 そう思い、ブルーは手を繋いだままジョミーの身体を抱きしめるようにして目を閉じた。
















  
『いのち』とは別のお話なのですが、『いのち』のプロローグ的なお話にもなり得るやも^^
せーりって、大変ですよね!
世の中の男性にもあればいいのに、といつも呪詛を送っています(笑)



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