不器用なあなた 4





ジョミーが目を覚ましたのと、ブルーが倒れ臥したのは同時だった。
ブルーが倒れる様子がまるでスローモーションのように見えて。
ジョミーは驚き、自らの怪我を省みずに飛び起きた。
思念波でドクターを呼ぶと、ドクターは慌てて医務室へと駆けつけた。
そして隣のベッドにブルーを寝かせると、機材でブルーの心拍や脳波を図り始めた。
幸い、命に別状はなかったらしい。
ドクターが心配そうにブルーを見つめるジョミーに、サイオンの使いすぎで眠っているだけだと教えてくれた。
そしてブルーがサイオンを使ったのは、ジョミーを連れ戻す為なのだと。
申し訳なく思いながらも、心の中ではとても嬉しかったのだ。
嫌われたと思っていたブルーが自分を連れ戻すために動いてくれた。

何だかとても都合の良い夢を見た。
現実のブルーはあんなことを言わないだろうが、それでもいい。
ブルーが少しでも見れて良かった。
ジョミーはそう思いながら眠りについた。





そして次に目を覚ますと、ジョミーの手はブルーの手に繋がれていた。
驚いたジョミーは手を離そうとしたのだが、がっちりと繋がれていて離れない。
いつの間にか、ブルーの横たわるベッドがジョミーのベッドの真横に来ていたのだ。
久しぶりに伝わってくる温もりに思わず涙が溢れる。
ブルーに触れられることが、こんなに嬉しいなんて。
早く泣き止まないと、ブルーが起きてしまったらまた驚かせてしまうだろう。
開いている右手でごしごしと目元を擦るが、どうにも収まらない。

「ん…」

そうこうしているうちにブルーが目を覚ましてしまった。
ブルーの赤い瞳がジョミーの姿を捉える。
またあの冷たい瞳で、酷いことを言われるのだろうか。
いや、酷いことなんかじゃない。
ブルーの言うことは真実だ。傷付くほうがおかしいのだ。
そう思ったジョミーは乱暴に涙を拭い、ブルーから離れようとした。
だが、泣いているジョミーを見たブルーは、むくりと体を起こして繋いでいた手を引っ張り、ジョミーを掻き抱いた。

「また泣いているのかい…?」
「誰のせ、だと…っ」
「…僕のせいで、泣いてるんだね…」

ジョミーの涙が、ブルーの肌を濡らす。
二人とも傷を負っている為に、上半身は裸のままだ。
ブルーはジョミーの背をあやす様に擦りながら、ぎゅっと抱きしめた。

「今まで、冷たくしてすまなかった…辛かった…だろう?」

ブルーの腕の中でジョミーの肩が撥ねる。
さっきの夢の様に、ブルーがとても優しい声色で話すのだ。
それが、とても嬉しかった。

「っ…っく…ば、か…ブルーの、ばか…!」
「ああ…本当に馬鹿だ…ごめん…」
「僕が、どんな気持ちだったかも知らないで…!ブルーに冷たくされて、すっごく痛かった…!悲しかった…!」

ブルーの肩を、ぽかりと叩いて涙を流すジョミー。
ブルーはジョミーの体を離して、噛み付くように口付けた。
口内を貪られ、ジョミーはブルーの白い腕を掴む。
すると、ブルーはジョミーを再び抱きしめて言った。

「…怖いんだ」
「え…?」
「君を好きになって、でも僕の命はあと少しで…。君を縛り付けるのが嫌だった。君を抱いてしまえば、もう離せなくなる。後戻り出来なくなりそうで、怖かった。だから…君を突き放そうと思った。嫌いになってくれれば、僕が逝くときに悲しい想いをさせなくてすむと思ったんだ。」

ぽつりぽつりと囁かれるブルーの本心。
ブルーはずっとジョミーのことを考えていてくれたのだ。
おそらくこの先、ジョミーを残して逝ってしまうだろうから。
そのことを気にして、気を使っていてくれたのだ。
でも。

「僕は…後になんて戻らない!後戻りなんて、しなくていいんだ!僕は、あなたが好きで…あなたも、僕のこと…す、すきで…それだけでいいじゃないか…!何で嫌いになんて…!」

馬鹿だ。
そんなことを考えるブルーも馬鹿だが、ブルーが悩んでいたことに気付かなかった自分も馬鹿だ。

「ごめんなさ…」
「いや、僕が悪いんだ…。勝手に決めつけて、君を傷つけた…本当に、すまない…好きでいてくれてありがとう。」

ぎゅっと抱きしめられて、ジョミーはブルーの腕の中で涙を零した。
やっと、やっと向き合えた。
今までも二人の想いは向き合っては居たけれど、相手を想うあまり擦れ違っていた。

「本当に…後悔、しないかい…?」
「しない…!」

ブルーはきっぱりと言ったジョミーの顎を持ち上げて、噛み付くようにキスをして。
唇を合わせたままどさりと組み敷かれて、ジョミーは覚悟を決めて、目を閉じた。


















翌朝、目を覚ましたジョミーは目の前で眠るブルーを見てとてもくすぐったい気分になった。
少しあどけない表情で眠っているブルー。
昨夜は想いが通じて初めてブルーに求められた。
散々貪られたジョミーは、途中で意識を失ってしまった。
体に感じる倦怠感や腰の痛みが、なんだかとても嬉しく感じた。

「ありがとう、ブルー…」

ブルーの白い頬に触れるだけのキスを落として。
ジョミーは再びベッドへと潜り込んだ。

ブルーの命があとどれくらいかは分からない。
でも、その時が来るまで。
後悔の無いように、ブルーを全身で愛し、全身で受け止めよう。
願わくば、彼が独りで逝くことのないように――――。













     
不器用なあなた、これで完結です^^
このお話は死に向かうブルーとジョミーのお話ですので、最後が少ししんみりしてしまいました。
ノン!そして反動で甘いお話が書きたく…
TVアニメで言えば、宇宙に出たすぐ後かな?
感想などございましたら、拍手かメールにてどうぞ^^









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