BLOOD 3





ボフンという音と共にベッドが沈む。
手首を拘束されて、括りつけられて。
やはり、あの映画のように手篭めにされてしまうのだろうか。
ジョミーは困惑した眼差しでブルーを見た。

するとブルーはどこから出したのか、鈍く光る短剣で自らの掌を切った。
スッと赤い線が入り、そしてそこから赤い血液が溢れ出す。
それは見る見るうちに掌から腕を伝い、シーツにぽたぽたと落ちた。
赤いそれは真っ白なシーツに幾つもの染みを作る。

「な、何して…!」

自分で自分に傷をつけるなど、正気なのだろうか。

「さぁ、ジョミー…これを、飲むんだ」

そう言って血に塗れた手を差し出されて。
ジョミーは首を横に振って嫌がった。
突然人の血を飲めと言われても、普通の人間はそう簡単には飲めないだろう。
唇をぎゅっと結んで顔を背けたジョミー。
ブルーの掌から溢れる鮮血が、ぽたりぽたりとジョミーの頬や首筋を濡らしてゆく。

「ひ…っ…!」

温かい血液が肌を伝う感触に、ジョミーは恐怖を感じた。
いやいやと首を振りながら逃げようとするジョミーに、ブルーは目の前で自らの血液を啜って見せた。
そして赤く濡れた唇を、ジョミーの恐怖に戦慄く唇にぴったりと合わせた。
舌でジョミーの唇をこじ開けると、口内の血液を流し込む。
飲み込むまいと抵抗するジョミーを無理矢理押さえつけて。
貪るように唇を重ねた。
ジョミーがごくりと嚥下したのを確認すると、ブルーはゆっくりと唇を離してジョミーの唇についた血液を舐め取った。

「ふ、ぅ…けほっ」

ブルーの血液を飲み込んでしまったジョミーは、涙目で噎せる。
突然唇を塞がれて呼吸の仕方も分からないのに血液を飲まされたのだから、噎せて当然だった。
肩で呼吸をして息を整え、ジョミーはブルーを睨みつけた。

「な、なにす…!」

口の中が生臭くて堪らない。
鉄の味が広がっていて、ジョミーは不味さのあまり思いっきり眉を顰めた。
ブルーは汚れた自らの唇を舐めるとジョミーの上から退いた。
ふと彼の掌を見ると、既に傷は殆ど塞がっていて。
驚いたジョミーは思わず掌を凝視してしまっていた。

そして、ブルーがベッドから立ち上がったと同時に、どくりと心臓が撥ねた。
何かが体の奥から湧き上がってくる様な感覚に襲われた。

「あ、ッ…なに…っ」

鼓動がだんだんと大きくなり、耳に響く。
何かが欲しい。
何かは分からないのだが、欲しくて堪らない。
息が荒くなり、喉がカラカラに渇いて。
ジョミーは喉を押さえてベッドの上で体を丸めた。

「苦しいかい…?」

ブルーが、ジョミーの目尻から零れる涙を拭う。
ジョミーがふと先程の傷口を見ると、まだ微かに血が滲んでいる。
そこから、なんだかとてもいい香りがして。
ジョミーは無意識にブルーの手を掴み、掌をぺろりと舐めた。

「おいしい…」
「ジョミー?目覚めたのか…?」

うっとりと呟いたジョミーの口元を見ると、先程よりも幾分鋭くなった犬歯が見え、ブルーは安心したように息を吐き出した。
だが、次の瞬間、ぶつりと言う音と共に感じた手首の甘い痛みに眉を顰めた。
痛みの走った手首を見ると、ジョミーが手首に噛み付いていて。

「ジョミー!?」

二つの疵から溢れる血液を、ぺろりと舐めて微笑んだジョミー。
その表情はとてつもなく妖艶だ。
嬉しそうに血液を舐めるジョミーに、ブルーは何とも言えない気分になる。
血を吸うことは何度もあったが、吸われるのは初めてだったからだ。
体の中で沸き起こる欲情に似た感覚。
ブルーは欲望を打ち消すように目を閉じた。














     
ブルーの血を飲ませたのは、ジョミーの吸血鬼の本能を呼び覚ますための誘い水でした^^
脅えて目を瞑って顔を背けるジョミーのほっぺとか首に血を滴らせるブルーにハァハァしてしまったのは私だけかしら…!笑





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